AI · 7 October 2026
S/4HANA移行加速もAI活用準備は不十分、ASUG調査で判明
ASUGの調査により、SAP顧客でS/4HANA移行が加速する一方、約3分の1が明確な戦略なしにAI活用を議論している実態が明らかになった。
何が起きたか
SAPユーザー団体ASUG(Americas' SAP Users' Group)の調査担当ディレクター、Lauren Dixon氏がまとめた最新の調査結果によると、SAP顧客の間でS/4HANAへの移行が加速している一方、AI活用への準備は十分に整っていない実態が明らかになった。Diginomicaが報じたこの調査では、SAP顧客企業の約3分の1が、具体的な戦略を持たずにAI活用について議論している段階にあるという。
調査は、S/4HANAへの移行そのものが目的化してしまい、AIが本来もたらすはずの価値につながっていないケースが少なくないことを示唆している。基盤となるERP環境の近代化が進んでも、その上でAIをどう活用するかという具体的な計画やガバナンスが伴わなければ、投資効果は限定的になるというのが調査の主旨だ。
なぜ重要か
この調査結果は、企業のAI活用戦略が基幹システムの近代化と密接に結びついていることを改めて示している。S/4HANAのようなERP移行は、単なるシステム更新ではなく、データ基盤を整備し、AIが実際に機能する環境を構築する機会でもある。しかし多くの企業がこの機会を「移行そのもの」で終わらせてしまい、AIを後付けの議論として扱っている点が課題として浮かび上がる。
経営層やIT部門のリーダーにとっての示唆は明確だ。AIの成果は、モデルの性能よりも、その土台となるデータとプロセスの整備状況に大きく依存する。移行プロジェクトの計画段階でAI活用のユースケースやガバナンス体制を組み込まなければ、移行完了後に「AIをどう使うか」という議論を改めて始めることになり、投資回収までの時間が長引くおそれがある。
Renascenceの見解
この調査が示す構図は、テクノロジー導入にまつわる典型的な落とし穴でもある。組織は「新しい基盤に移行すること」自体を成果と捉えがちだが、顧客や従業員が実感する価値は、その基盤の上でどのような体験やサービスが実現できるかにかかっている。
多くの企業がAIを戦略ではなく話題として扱っているという今回の指摘は、サービスデザインの観点からも重要な警鐘だ。基幹システムの近代化は、顧客対応の自動化や従業員の意思決定支援など、具体的な体験上の成果と紐づけて計画されるべきであり、移行計画の初期段階でユースケースとデータガバナンスを定義しないまま進めると、結局「使われないAI」を抱えることになる。顧客体験に本気で向き合う企業は、S/4HANAのような移行プロジェクトを、IT部門だけでなく体験設計の責任者も含めた横断的な取り組みとして位置づけるべきだ。
Sources
This briefing was written by our Newsdesk, synthesising reporting from the outlets below. Follow the links for the original coverage.
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