銀行 · 2026年9月6日
Incoreバンク、自動化されたリスク評価を伴う顧客オンボーディング向けAIを試験導入
スイスのIncoreバンクは、KyndrylおよびGoogle Cloudとの概念実証を完了し、コンプライアンス水準のリスク評価を維持しつつ顧客オンボーディングを高速化するAIエージェントを試験導入した。
何が起きたか
スイスのIncore Bankは、Kyndryl および Google Cloud と共同で、顧客オンボーディング業務にAIエージェントを活用する実証実験(PoC)を完了した。このPoCでは、コンプライアンス上必須となるリスク評価の水準を維持しつつ、AIによって顧客受け入れプロセスの処理速度を高めることが検証された。
従来、銀行の新規顧客受け入れプロセスは、本人確認や各種リスク評価など多くの手作業を伴い、時間を要する業務として知られている。今回の取り組みは、そうした工程にAIエージェントを組み込むことで、処理スピードと規制対応の精度を両立できるかを検証するものであった。
なぜ重要か
金融サービス業界では、規制対応の厳格さゆえにAI導入が慎重に進められてきた領域が多い。今回のPoCは、AIを単なる業務効率化の手段としてだけでなく、コンプライアンス品質を落とさずに顧客対応の初期体験を改善する手段として位置づけている点が注目される。オンボーディングは顧客が金融機関との関係で最初に触れる体験であり、その速さと正確さは、その後の信頼構築に直結する。
Kyndryl と Google Cloud という技術パートナーとの連携により、AIエージェントが既存のリスク評価フレームワークとどのように統合されるかを実務レベルで検証したことは、他の金融機関にとっても、規制産業におけるAI活用の実装モデルとして参考になり得る。
Renascenceの視点
この事例が示すのは、AI導入の成否が「速度」と「統制」のどちらを優先するかという二択ではなく、両立をどう設計するかにかかっているという点である。オンボーディングという最初の顧客接点は、体験設計とリスク管理が交差する重要な瞬間であり、そこにこそ行動経済学的な工夫の余地がある。
多くの企業がAI導入を「効率化」の物語として語りがちだが、本当に問われているのは、AIが判断を下すプロセスに顧客がどれだけ納得できるかである。オンボーディングでの待ち時間短縮は歓迎されるが、その裏でリスク評価がどのように行われているかを顧客が理解できなければ、信頼は築かれない。顧客体験に本気で向き合う組織は、AIの速さを誇る前に、その判断プロセスの説明可能性と透明性をどう顧客に伝えるかを先に設計すべきだ。
情報源
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